こんにちは。今日は、オペラ『フィガロの結婚』から「喧嘩の二重唱」と呼ばれている曲を解説します。
オペラの中で喧嘩が起きて、言い合いしている歌があるんですよ!
【このCDなかなか良いかと】
この曲に登場するのは、
- 主人公フィガロの恋人で、結婚式を挙げる予定のスザンナ
- フィガロにお金を貸していて、返せないなら結婚するという契約になっているマルチェッリーナ
マルチェッリーナは、女性の召使の中でも一番立場が上、スザンナよりも年も上です。
この二人が、扉のところで鉢合わせになり、言い合いが始まります。
ドアの前でお互いに、どうぞお先にお通りください、と譲り合います。
その後、
マルッチェッリーナは、新しい花嫁さん、なんて呼び、
スザンナは、誇り高い奥様、というように返します。
続いてマルチェッリーナ、
伯爵の愛も受けられて
(素晴らしいわね!)みたいなことを言います。スザンナが伯爵に言い寄られている事を知っているんですね。そして、もちろんフィガロの恋人ですから、それはスザンナにとっては嫌な事、困っている事、マルチェッリーナは嫌味を言っているわけです。
スザンナはそれに対して、
スペインの恋人、と返します。このあたり、スザンナはマルチェッリーナの攻撃に返し切れずにいます。音楽上もそれを表していて、マルチェッリーナはスザンナの言葉にすぐに返すのですが、スザンナは少し間があってから返答しているんですね。後で、同じ言葉でやり取りが出てくるのですが、その部分では、形成逆転しているので、返す早さが逆になっています。(こういうのが、オペラの音楽の面白いところなんです!楽譜上で、この場合は、どちらが優位に立っているかも描かれているんです!でも、よく分からなかったら、気にしないで、音楽をそのまま楽しんでくださいね!)
続いて、マルッチェリーナ:その人柄、その立場に!
あなたは本当に人柄が良くて魅力的で素敵ね!なんて嫌味攻撃を続けます。それに対して
スザンナ:そのお衣裳に、、、そのお年に!!
スザンナは目上のマルチェッリーナに“年齢”の事を言ってしまいました。するとこれが攻撃として効果があり、
「悔しい!これ以上ここに居たら、逆転されてしまう…」と打撃を顕わに
その様子を見たスザンナ
「占い師のおばあさん、笑わせてくれるわねwww」
と、余裕がでてきました。形成逆転です。今度は同じ言葉ですが、スザンナがどんどん攻撃していきます。そして止めの、“お年ですわね”という発言を繰り返します。
この言葉は、L’eta`(レタ、と日本語なら聞こえます)
etaとはイタリア語でそのまま、“年齢”のことです。きっと聞き取れると思いますよ。
悔しそうなマルチェッリーナ、笑わせてくれるわね!と勝利に歌うスザンナ(高音部の音形はスザンナの笑い声を表しています)
二人の歌う内容も、全然違うリズムや音ですが、合わさったハーモニーはモーツァルトの音楽らしく、とても心地よいものです。
(ちなみに、この重なり合った複雑性が脳には良い刺激になるみたいですよ)
ぜひ、音楽の方を聞いてみてくださいね。